パルミジャーニ・フルリエ創業時の息吹を伝える
傑作コレクション「トリック」の世界
文:名畑政治 / Text:Masaharu Nabata
編集:戸叶庸之 / Edit:Tsuneyuki Tokano
※掲載商品の情報及び価格は変更される場合がありますのでご了承ください。
文:名畑政治 / Text:Masaharu Nabata
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“神の手を持つ”とまで言われる天才時計師ミシェル・パルミジャーニが設立したパルミジャーニ・フルリエ(PARMIGIANI FLEURIER)。このブランドを代表するコレクションが、創業者パルミジャーニが1996年のブランド創設時に最初にデザインしたという「トリック」であり、東京の名店YOSHIDA(ヨシダ)においても高い人気を誇っている。そこで今回は、長い年月を経て復活し、さらなるエレガンスを獲得した「トリック」のコレクションから注目すべき3つのモデルを紹介しよう。
パルミジャーニ・フルリエは、1996年、“神の手を持つ”と呼ばれる辣腕の時計師ミシェル・パルミジャーニによって設立された時計ブランドである。
「時計の谷」として知られるスイス・ニューシャテル州のヴァル・ド・トラヴェールの中心地フルリエ近郊の町クヴェで生まれたパルミジャーニは、時計学校を卒業し、時計師修行を終えた後、1976年に古典時計の修復工房を設立。この工房では修復だけにとどまらず、名だたる高級時計メゾンから複雑時計ムーブメントの開発などの依頼も受け、確かな実績を残した。
やがて、その高度な技術が認められ、希少価値の高い古典時計やオートマタ、ロマノフ家の秘宝として知られるファベルジェのイースターエッグなどのコレクションを保有するサンド・ファミリー財団から、コレクションの修復と管理を依頼され、やがて財団から資金援助を得て、1996年、「パルミジャーニ・フルリエ」として初のコレクションを発表し、ブランドがスタートした。
個性的な外装デザインと高度な技術を駆使した精密なムーブメントで評価を確立したパルミジャーニ・フルリエは、2000年から順にケースメーカーとムーブメントパーツメーカーを傘下に収める。そして2003年にムーブメントの製造部門が「ヴォーシェ・マニュファクチュール」として独立。さらに2005年には高級ダイヤルメーカーを創設し、いわゆる垂直統合を果たすことで、世界有数の本格マニュファクチュールとなった。
コロナ禍によって旅行やビジネスによる移動が制限されてきたものの、世界は今、徐々にコロナ以前の状態へと戻りつつあり、それによって爆発的な旅行ブームが到来することは、誰の目にも明らかだ。
となると需要が高まるのが自国以外の他の地域の時刻を表示できるワールドタイムやGMT、デュアルタイムの機能を持つモデルである。
パルミジャーニ・フルリエの「トリック エミスフェール レトログラード」は、世界を股にかけて活動する人のため、2007年に開発された個性あふれるデュアルタイム機能搭載のタイムピースである。
細かな溝が刻まれたベゼルと螺旋を描く曲線が刻まれたギョーシェ装飾が見事なハーモニーを奏でる「トリック エミスフェール レトログラード」。ブルーのダイアルとエルメスが手掛けたブルーのアリゲーターストラップも、このモデルの精密感と相性が良い。
独自に開発されたふたつの時間帯の時刻表示機能によって、GMTと、それから1時間、あるいは30分や15分の時差がある国や地域を含む、さまざまな場所の時刻を表示することが可能となっている。
そして、このモデルでは、それぞれの時間帯が12時間表示となっており、それに対応するデイ/ナイト表示を装備。これにより各時間帯の時刻が昼か夜かが、即座に理解できるよう配慮されている。
また、このモデルでは名称にある通り、センターから伸びた針によってレトログラード式の日付表示機構も備えている。
これはダイアル下半分の外周部にプリントされた1日から31日の数字を、先端が赤く塗られた三日月型の指針で示し、日付が月の末日に到達すると、夜中の12時に針が瞬時に1日に戻り、再び日付を示すというメカニズムである。
もちろん、ベゼルには「トリック」のシンボルである緻密でエレガントなローレット加工が施されており、このモデルがひと目でミシェル・パルミジャーニの作品であるとわかるのである。
トリック エミスフェール レトログラード
ふたつのリューズを装備することで、ふたつの時刻表示を切り離して調整できる独自構造の自社製ムーブメントを搭載するモデル。2時位置の小型リューズを引き出すと、モジュールがムーブメントから切り離され、第2時間帯とは独立した調整を分単位で行える。4時位置の主リューズは巻き上げと、組み合わされた2つの時間帯の時刻調整に使用できる。
■PFC901-1020001-300182 ■42.8mm ■ステンレススチールケース ■アリゲーターストラップ ■自動巻き ■30m防水 ■¥3,817,000(税込)
腕時計のひとつの究極のカタチが三針のシンプル・モデル。パルミジャーニ・フルリエの「トリック クロノメーター」は、2017年にミシェル・パルミジャーニが最初に設計したモデルを、新たなデザインで復刻したものでありブランドを代表する存在となっている。そして、その翌年12月に美しいギョーシェ装飾文字盤を搭載してリリースされたのが、ここで紹介するモデルである。
シンプルさと緻密さを絶妙に配合することで、パルミジャーニ・フルリエならではのエレガンスを表現する「トリック クロノメーター」。スレートグレーのダイアルとローズゴールド・ケースのコンビネーションが美しい。
中心部から螺旋状の線を描きながら交差する曲線は、ミシェル・パルミジャーニのデザインの基盤である「フィボナッチ数列」という黄金比に基づいている。
しかし、このギョーシェ装飾は単に美しさだけを追求したものではない。それは立体的なゴールドのアラビア数字によるインデックスや12時位置に設けられた楕円で囲まれたブランドのロゴ、そしてセンター軸の下にあるスイス公認クロノメーターを示す「Chronomètre」という表記を、くっきりと浮かび上がらせる効果を担っているのだ。
しかし、パルミジャーニ・フルリエでは、この三針モデルを、単にシンプルなだけで終わらせることなく、6時位置に前後3日間の日付を表示する大型の日付表示窓を設置することで、豊かな表情と個性を静かに主張するのである。
トリック クロノメーター
緻密なギョーシェ装飾を施したスレートグレーのダイアルと、赤味の強い18Kレッドゴールドのインデックスと針、そしてケースが見事な調和を見せる。この深い色合いのダイアル&ケースに合わせ、落ち着いたハバナカラーのアリゲーターで作られたエルメス製ストラップがグッと印象を引き締めている。
■PFC423-1600201-HA1241 ■40.8mm ■18Kレッドゴールドケース ■アリゲーターストラップ ■自動巻き ■30m防水 ■¥4,576,000(税込)
トリック クロノメーター
漆黒のダイアルに白いインデックスとミニッツ・トラックが映えるモデル。ケースは18Kホワイトゴールドだが、針や日付表示窓の枠にレッドゴールドを用いることで、エレガントさと高貴さが加味されているように思う。
■PFC423-1201400-HA1441 ■40.8mm ■18Kホワイトゴールドケース ■アリゲーターストラップ ■自動巻き ■30m防水 ■¥3,597,000(税込)
時計師であるミシェル・パルミジャーニが、ブランド創設以前から現在まで続けているのが、古典時計の修復である。彼はこれまで歴史的にも極めて貴重なさまざまなタイムピースやオートマタの修復に関わり、その仕事を見事にやり遂げてきたが、その豊富な修復の経験は、現在のパルミジャーニ・フルリエのコレクションにも見事にフィードバックされている。
この修復の経験から生み出された傑作タイムピースのひとつが、この「トリック トゥールビヨン」である。
ケースは1996年にパルミジャーニ・フルリエというブランドが創設された際、最初にミシェル・パルミジャーニがデザインした「トリック」のデザインを継承。ここに搭載されるムーブメントは、可能な限りの薄さを追求して自社で開発された超薄型トゥールビヨン・ムーブメントのCal.PF517である。
創業者ミシェル・パルミジャーニの誕生の時間にちなみ、7時位置にフライングトゥールビヨンを設置した自社製ムーブメントのCal.PF517を搭載する「トリック トゥールビヨン」。
薄さを追求するため、自動巻きのローターはムーブメントの中に埋め込まれたマイクロローター方式を採用。そのローターの素材は比重が高く巻き上げ効率に優れたプラチナが用いられている。
またトゥールビヨン脱進機は上面のブリッジを持たないフライングトゥールビヨンとなっており、これらの仕様によってケースの厚さは10mmを切った9.45mmにまで抑えられている。したがってコンプリケーション・モデルでありながら、装着感が極めて良好なことが、このモデルの大きな特徴となっている。
トリック トゥールビヨン
可能な限り薄型化するため巻き上げにマイクロローター方式を採用し、フライングトゥールビヨンはムーブメントのメインプレートに組み込まれている。また、トゥールビヨンが7時に配置されているのは、創業者であるミシェル・パルミジャーニが午前7時8分に生まれたことへのオマージュだという。
■PFH479-1600200-HA1241 ■42.8mm ■18Kレッドゴールドケース ■アリゲーターストラップ ■自動巻き ■30m防水
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ロングランの人気連載コラム。グレッシブが擁するベテランから気鋭のライターが、YOSHIDAが取り扱うタイムピースおよびブランドをご紹介します。時計の基本的な情報はもちろん、この連載ならではの様々な切り口で注目ブランドの魅力を解説します。パテック フィリップ、オーデマ ピゲ、ウブロなどの人気ブランドから新進気鋭まで名店YOSHIDAならではの審美眼について特集を展開します。
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