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YOSHIDAで体験する、高級時計への旅 ~第77回~

2020年新作から読む、マニュファクチュール・ウブロの実力

2020.3.13
■HUBLOT(ウブロ) ■ビッグ・バン MP-11 14デイ パワーリザーブ レッドセラミック ■911.CF.0113.RX

文:田中克幸 / Text:Katsuyuki Tanaka
編集:戸叶庸之 / Edit:Tsuneyuki Tokano

※掲載商品の情報及び価格は変更される場合がありますのでご了承ください。

 2回連続してお届けする2020年ウブロの厳選新作詳報。前回では2005年の誕生以来、実に15年目にして初登場となった統合型ブレスレット装備モデル「ビッグ・バン インテグレーテッド」を総力特集。さて、第2回目の今回YOSHIDA(ヨシダ)が着目したのは、マニュファクチュール・ウブロの実力を存分に発揮したふたつのモデルである。

ウブロ独創の“レッド”を身にまとう複雑機構
「ビッグ・バン MP-11 14デイ パワーリザーブ レッドセラミック」

 自社一貫製造を意味する“マニュファクチュール(Manufacture)”とは、一般的にムーブメントの設計・製造・組立をインハウスで行う体制を示すが、最近ではケースの素材開発や設計も自社で行うメゾンも少しずつではあるが現れている。これもマニュファクチュールの範囲と捉えて良いと思う。

 “異なる素材やアイデアの融合=The Art of Fusion”をブランド哲学とするウブロは、自社開発・製造のムーブメントのみならずケース素材まで自社で開発し、両者を融合するという点で、いわばマニュファクチュールの枠を大きく広げた先駆的な存在である。

 その代表モデルが2018年発表の複雑時計「ビッグ・バン MP-11 14デイ パワーリザーブ サファイア」。これは新型の手巻きムーブメントCal.HUB9011と、透明度を追求したサファイアクリスタルケースを融合した画期的なモデルであった。

 そのCal.HUB9011に2018年発表の新素材、鮮やかな赤を実現した“レッドセラミック”を融合させた2020年の新作が、今回紹介する世界限定100本の「ビッグ・バン MP-11 14デイ パワーリザーブ レッドセラミック」である。


 ウブロ独自によるケース素材の開発は、初の自社開発ムーブメント「ウニコ」発表の2010年に“キングゴールド”、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)との共同開発により完成した2011年の“マジックゴールド”、ウブロの代名詞的存在であるセラミックだ。

 今回の新作に採用された2018年発表の“レッドセラミック”とは、ウブロの研究開発(R&D)部門と金属及び素材研究部門が、約4年の期間を経て製造方法の開発に成功したカラーセラミックを使用する。従来では製造困難とされた、濃密かつ鮮明な赤色の発色に成功。この“レッドセラミック”の色彩はまさに独創性の賜物。セラミックの加圧と加熱焼成の融合により顔料(ピグメント=Pigment)を焼成しない方法が革新的で、しかも従来の1,200HV2より優位な1,500HV1硬度を確保した点も驚異的だ(HV=ビッカース硬度)。


 このケースと融合する自社開発・製造の手巻きムーブメントCal.HUB9011は、製品名にも表記されるように約14日間ものロングパワーリザーブ機能を誇る複雑ムーブメント。これを実現したのはダイアルのほぼ半分を占める7つの連結した香箱(バレル)で、垂直姿勢の香箱を水平軸に並べた多重円筒式構造が特徴。これにより連結香箱部分はケース側面から見ると時分計表示部分よりも盛り上がった構造に見える。垂直姿勢の連結香箱に対し12時位置の時分計は水平位置なので、動力伝達方向を90°に変換するためヘリカルウォームギアを採用した。また、このキャリバーの革新的なもう一つの特徴として、てん輪が文字盤側に転置され、ヘリカルギアと対称をなしている。4Hzで振動するこの新しい インデックス・アセンブリ・システムは特許を取得している。

 従来は存在しなかったセラミック技術による鮮やかなレッドケースと、大胆な香箱連結と動力伝達方式により約14日間のパワーリザーブを実現した複雑機構。新鮮な発想力とこれを実現した技術力が見事に融合した「ビッグ・バン MP-11 14デイ パワーリザーブ レッドセラミック」は、2020年の新作中、特に華となるモデルである。


アイコニックなトノー型ケースと
再構築された人気自社製キャリバーが融合した
「スピリット オブ ビッグ・バン メカ-10」

 ウブロがムーブメント・マニュファクチュールであることの自負は、同型モデルでもケースサイズや形状が異なる場合は、ムーブメントを再設計するという方針に表れている。

 自社設計・製造ムーブメント搭載のモデルに限られてはいるものの、「ビッグ・バン ウニコ」ではケース径45mmのモデルはCal.HUB1242、42mmケースはCal.HUB1280を搭載している。もちろん機能は同じ自動巻きリスターティング・フライバッククロノグラフで、コラムホイール装備だ。

 安易な発想を持つ時計ブランドならば、ケースの内側にスペーサー(あんこ)を備えることで3mmのサイズ差を相殺し、これで同型ムーブメントを流用するという方法を採用するだろう。事実そのような時計はこれまでも存在してきた。しかし理想論を言えばマニュファクチュールでは避けるべき行為である。

 昨今では(希望も含めて)スペーサー利用が減少していく傾向を感じるが、これは1990年代の機械式時計の復権以降、発表される時計にシースルーバックが増加したことにも関係があるかもしれない。時計の裏側から文字どおり舞台裏が丸見えなので、さすがに見苦しいと自覚する時計会社が増えてきた可能性もある。それだけ目利きの時計ユーザーが増えたのであろう。

 今回紹介する2020年注目最新作のもうひとつのモデルが「スピリット オブ ビッグ・バン メカ-10」である。


 “メカ-10”とは約10日間のロングパワーリザーブ機能を意味し、第1号モデルの発表は2016年のバーゼルワールド。ビッグ・バンのケースを身にまとったラウンド型ケースの「ビッグ・バン メカ-10 チタニウム」が当該機だが、その4年後に発表された本作はトノー型のスピリット オブ ビッグ・バンのケース。このラウンド型からトノー型へのケースフレームの変更に伴い、同型のキャリバーを格納するためウブロでは新たにムーブメント構造の再構築を行い、よって搭載ムーブメントは「ビッグ・バン」のCal.HUB1201からCal.HUB1233へと換装された。


 基本機能は12時と6時側に装備されたふたつの香箱、12時位置の水平駆動式ラック&ピニオン機構、9時のスモールセコンド、そして7時-8時の脱進機でこれらのほとんどがオープンワークのダイアル側から視認できる(香箱はケースバックから明快に見ることができる)。

 両者の差がもっとも表れるのがパワーリザーブ機構で、「ビッグ・バン」のCal.HUB1201では6時のディスクに10日間のカウントダウンを行い、残り3日間に入った段階で3時位置のディスクに赤いマークが出現する。一方、今回の新作ではこれらの表示機能が3時のディスクにまとめられている。ケースバックはシースルー化されており、各パーツを固定する地板の役目をブリッジが担当するのが見て取れる。


 なお、バリエーションはここで紹介する18Kキングゴールドの他、ブラックセラミックとチタニウムケースが用意されている。

 マニュファクチュール・ウブロの基本精神が反映された、今年を代表するモデルのひとつが「スピリット オブ ビッグ・バン メカ-10」である。


今知っておきたいウブロの2020年最新作4選

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