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YOSHIDAで体験する、高級時計への旅 ~第5回~

YOSHIDAとセイコー。
70年以上にも及ぶ両社の情熱とつながり

2018.11.16
Grand Seiko(グランドセイコー) 1907年「服部時計店」

取材・文:竹石祐三 / Report & Text:Yuzo Takeishi
写真提供:セイコーウオッチ、YOSHIDA
編集:戸叶庸之 / Edit:Tsuneyuki Tokano

※掲載商品の情報及び価格は変更される場合がありますのでご了承ください。

セイコー。それは、昔も今も、
顧客の心を惹きつける存在

 日本最高峰の時計メーカー、SEIKO(セイコー)と、東京渋谷区・幡ヶ谷の時計専門店YOSHIDA(ヨシダ)。この両社のつながりは長く、そして深い。

 現在YOSHIDAでは、セイコーが展開するCREDOR(クレドール)、GALANTE(ガランテ)、そしてGrand Seiko(グランドセイコー)を取り扱い、それらすべてのブランドにおいてセイコー社よりトップディラーの表彰を受賞している。片や日本を代表するマニュファクチュールとしてクオリティを追求し続け、片や世界屈指の時計専門店として、クオリティの高い時計を熱心に販売──70年以上に及ぶ両社の情熱と関係性は、YOSHIDAの長い歴史における重要なピースとなっている。

Grand Seiko(グランドセイコー) 国産初の腕時計「ローレル」

屈指の時計メーカーと時計店の誕生

 1881年、後に日本のみならず、世界中の注目を集めることになる時計メーカーのルーツが、京橋区釆女町(現在の銀座五丁目あたり)に誕生した。

 店の名は「服部時計店」。中古時計の修理と販売を軸とした小売業として商いをスタートし、その後、1892年には時計製造工場の「精工舎」を設立した。1895年には自社初となる懐中時計「タイムキーパー」を発売し、1910年にはひげぜんまいの国産化にも成功。そして1913年、ついに国産初の腕時計「ローレル」を完成させる。後のセイコーは最高峰の時計メーカーとなるべく、着実にその礎を築き上げていく。

 日本の時計史におけるエポックな出来事から7年後の1920年、「吉田時計眼鏡店」は創業した。現在のYOSHIDAである。この頃の京王線はまだ甲州街道を走る電気軌道で、街道には馬車や牛車の往来もあった。のどかな時代である。


Grand Seiko(グランドセイコー) 「吉田時計眼鏡店」 Grand Seiko(グランドセイコー) ファーストモデル

人気ブランドへと成長するセイコーと、
高級路線を貫くYOSHIDA

 日本初となる民間テレビ局が開局し、民放テレビコマーシャル第1号としてセイコーのCMが放映された1953年、甲州街道が整備拡張され、現在に至る。当時、YOSHIDAでは地方の時計店から子息を預かり、時計の修理技術を教え込んでいたという。だが、二代目・正の時代になると「これからはピンセットを持っていても商売にならないだろう」と判断し、貴金属の取り扱いを開始。修理から販売中心の店舗へとシフトさせた。このときすでに高級品の販売に軸足を置いたのは、先見の明であろう。

 貴金属や舶来時計を扱うなかでも、セイコーは主軸だった。なかでも、当時の機械式時計の最高峰ブランドとして1960年にデビューしたグランドセイコーは、高精度かつ高品質だったことからたちまち話題に。その後発売されるキングセイコーやファイブスポーツも含め、当時のセイコーの評判はYOSHIDAの顧客のなかでも圧倒的に高かったという。それゆえ、盆や正月に実施されていたセール期間は、ウインドウに並ぶ商品だけでは数が足りなくなってしまうほど。セイコーの人気とYOSHIDAの販売力は、この当時すでに確立していたのだ。


Grand Seiko(グランドセイコー) 「吉田時計眼鏡店」

 やがて1974年、14金、18金などの貴金属をマテリアルとした「セイコー特選腕時計」をグループ化し、「セイコー クレドール」が誕生する。世界初のクオーツ式ドレスウォッチだ。クレドールは1981年、国民的ヒーローであり、現役を引退したばかりの長嶋茂雄を広告に起用するなど、ステイタスの向上に注力した。

 そのため、厳選された店舗のみでの取り扱いとなったが、YOSHIDAでは、すでに高級品を中心に販売していたことに加え、セイコーの時計をしっかりと販売してきた実績がある。YOSHIDAがクレドールを取り扱うことは必然だった。時は手軽なクオーツ時計やICライターなど、便利でリーズナブルなものが消費される時代。そんな中でも、YOSHIDAは高級路線を貫いた。

■Grand Seiko(グランドセイコー) ■SBGH201

SBGH201

2009年に復活を遂げたのが、メカニカルハイビートモデル「9S8シリーズ」。グランドセイコーのデザインコードを踏襲したシンプルかつ上品な意匠は、エレガントな装いにも溶け込む。
■40.2mm ■ステンレススチールケース&ブレスレット ■自動巻き ■10気圧防水

 クオーツ全盛の時代が続くが、やがて’80年代半ばには世界的に時計ブームが興り、1988年にはグランドセイコーがクオーツムーブメントを搭載して復活する。1993年にはキャリバー9F8系を搭載し、外観もかつてのグランドセイコー“らしさ”を携えた出来映えとなった。

 しかし、グランドセイコーの躍進はここからだ。1998年には、完全新規設計のキャリバー9S55を搭載して24年ぶりに機械式モデルが復活する。2004年には、ぜんまいで駆動し、クオーツと同等の高精度を実現するセイコーの独自機構「スプリングドライブ」を採用したモデルがラインナップ。そして、2009年にはキャリバー9S85を搭載し、オリジナルから実に41年の時を経て、ハイビートモデルが蘇ったのだ。

 この高精度モデルの復活を機に、クレドール中心だったYOSHIDAは再びグランドセイコーにも注力。その結果、クレドール、ガランテ、そしてグランドセイコーの3ブランドにおいて、何年にもわたってトップディラーを名乗っていくことになり、それは今後も継続されていくだろう。

 YOSHIDAにとってセイコーとは「顧客を惹きつけるブランド」であるという。昔から、セイコーはブランドの認知力があり、何より信頼があった。それゆえに、セイコーを扱っているというだけで集客につながったという。

 クオリティを追求し続けるセイコーと、高級路線を貫き信頼性の高い時計だけを販売し続けるYOSHIDA。両社にとって、その先にあるのは「顧客ファースト」の視点である。

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ロングランの人気連載コラム。グレッシブが擁するベテランから気鋭のライターが、YOSHIDAが取り扱うタイムピースおよびブランドをご紹介します。時計の基本的な情報はもちろん、この連載ならではの様々な切り口で注目ブランドの魅力を解説します。パテック フィリップ、オーデマ ピゲ、ウブロなどの人気ブランドから新進気鋭まで名店YOSHIDAならではの審美眼について特集を展開します。

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