オーデマ ピゲ ジャパンブティック限定モデル
2020年第二弾

文：篠田哲生 / Text：Tetsuo Shinoda
編集：戸叶庸之 / Edit：Tsuneyuki Tokano

※掲載商品の情報及び価格は変更される場合がありますのでご了承ください。

　繊細なメカニズムで構成されるハイ・コンプリケーションウォッチは、特別な時間を演出するために存在している。しかし特別な時計だからこそ、毎日使いたいという人も少なくないだろう。特にキャリッジが回転する美しいトゥールビヨン機構は、精度を高める実用機構でもあるのだから、毎日使ってその価値を享受したい。AUDEMARS PIGUET（オーデマ ピゲ）には「ロイヤル オーク」をベースにした、スポーティな極薄トゥールビヨンモデルがある。そのラインナップの中でも、特におすすめなのがジャパンブティック限定モデルである。

ハイ・コンプリケーションを普段使いするという贅沢

　わずか4.46mm厚という自社製の手巻きキャリバー2924を使用し、ケースの厚みも9mmに抑えている「ロイヤル オーク トゥールビヨン エクストラ シン」は、薄くてスマートな時計であり、しかもスーツにもカジュアルにも似合うロイヤル オークがベースとなっている。まさしく“毎日使えるハイ・コンプリケーション”として、これ以上の選択肢はないだろう。

　ところがこれまでの「ロイヤル オーク トゥールビヨン エクストラ シン」は、不思議なことに、ラインナップのクセがやや強め。ケースもブレスレットもピンクゴールドの華やかなモデルやスモークブルーのグラデーションにバゲットカットのブルーサファイアを組み合わせるモデル、あるいはケースとブレスレットをフルセラミックにしたり、プラムカラーのダイヤルを採用したりするなど、薄型ケースの端正さとは正反対の“攻めたモデル”がとても多いのだ。

　だからだろうか？ ジャパンブティック限定モデルの“普通さ”がとても心に響く。

シックを極めたトゥールビヨン搭載モデルの新境地ともいうべき佇まい。

　今回発表されたのは2モデルだが、どちらもダイヤル色はブラックが基調となっている。ひとつは、トゥールビヨンケージから放射線状に広がる「エヴォオルティブタペストリー」を、スモークグレーのグラデーション仕上げにしたもの。もう一つのモデルは、ダイヤル色はブラックで、ベゼルにバゲットカットのダイヤモンドをセッティングしている。どちらもケース＆ブレスレットにはホワイトゴールドを使用しており、通常モデルよりもノーブルな雰囲気にまとまっている。

ロイヤル オーク トゥールビヨン エクストラ シン

放射状に広がるタペストリーをグラデーション加工。エレガントな雰囲気を演出する。

■26522BC.OO.1220BC.01 ■41mm ■18Kホワイトゴールドケース＆ブレスレット ■手巻き ■50m防水 ■ジャパンブティック限定20本

ロイヤル オーク トゥールビヨン エクストラ シン

アイコンである8角形ベゼルにセッティングされるバゲットダイヤモンドは32個。

■26521BC.ZZ.1220BC.01 ■41mm ■18Kホワイトゴールドケース＆ブレスレット ■手巻き ■50m防水 ■ジャパンブティック限定10本

　しかしこれこそが、オーデマ ピゲのジャパンブティック限定モデルの凄さでもある。普通の考え方だと、ちょっと変わった色や素材を限定モデルに採用することで話題を集めるようにするが、オーデマ ピゲの場合は“ユーザーが本当に欲しい時計は何か”を理解した上で、日本市場用の限定モデルを作っている。だからショーケースに並んでいても目立たない。とくに「ロイヤル オーク トゥールビヨン エクストラ シン」の場合は、グローバル展開しているモデルの方が派手で、ジャパンブティック限定モデルが最も地味である。

　しかしそれこそが、時計愛好家のための戦略ともいえる。美しいトゥールビヨンウォッチを日常的に使いたいと思う時計愛好家にとっては、ホワイトゴールドのケースやブラック系のダイヤルはこの上ない選択肢になるだろう。“普通のレアピース”を楽しむのが、真の贅沢なのである。

18Kホワイトゴールドケースと手巻きムーブメントとの一体感が素晴らしい。