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YOSHIDAで体験する、高級時計への旅 ~第59回~

究極を体現する、オーデマ ピゲのチャイム機構

2019.11.8
■AUDEMARS PIGUET(オーデマ ピゲ) ■ロイヤルオーク コンセプト スーパーソヌリ トゥールビヨン クロノグラフ ■26577ST.OO.D002CA.01

文:篠田哲生 / Text:Tetsuo Shinoda
編集:戸叶庸之 / Edit:Tsuneyuki Tokano

 AUDEMARS PIGUET(オーデマ ピゲ)の複雑機構の頂点に立つ、ミニッツリピーター&スーパーソヌリ。その魅力を知り尽したYOSHIDA(ヨシダ)のセレクションによる注目の3モデルを紹介する。

究極の価値を提供するオーデマ ピゲの
ミニッツリピーター&スーパーソヌリ

 超複雑機構の中でも、特別な価値を持っているのがミニッツリピーターである。これはケースサイドのスライダーを操作すると内蔵するハンマーがゴングを打ち鳴らし、その音色で現在の時刻を知らせるというもの。美しい音色を数えながら、時刻を知るというこのロマンティックな機構を得意としているのが、オーデマ ピゲだ。彼らはミニッツリピーターを現代的に進化させた機構スーパーソヌリによって、聞く楽しみという新たな価値を提案している。

 ミニッツリピーターの源流は、塔時計にあり、鐘を鳴らして時刻を知らせる機構を、小型化させて懐中時計に搭載した。その目的は暗闇で時刻を知るため。しかし夜も明るい現代社会では、その性能は不要だ。それでもなお、時計機構の頂点に位置するのは、楽器にも似たロマンがあるからである。

 オーデマ ピゲのミニッツリピーター機構は、傘下の複雑機構工房オーデマ ピゲ ルノー エ パピが担当している。同社が作るミニッツリピータームーブメントは、ゴングの構造に特徴がある。ゴングは音を発する円型パーツとそれを支える支柱によって構成するが、オーデマ ピゲはこれを一体形成している。そのため叩いた際のエネルギーが分散せず、音がクリアになる。しかも一体型なので、耐衝撃性にも優れる。オーデマ ピゲのミニッツリピーターは、音色が美しいだけでなく、日常使いにも適しているのだ。


 繊細なパーツで構成される極上の機構を日常使いするというのはとても贅沢なことだが、オーデマ ピゲではそれを可能にする時計を作っている。それが“ロイヤル オーク×スーパーソヌリ”という夢のような時計だ。

 スーパーソヌリとは、2015年にコンセプトモデルとして発表され、その翌年に市販化された現代的なミニッツリピーター機構。そこで最も重視したのは、機構ではなく“音色”だった。2006年からローザンヌ工科大学と共同研究を開始し、過去のミニッツリピーターモデルの音をデジタル解析して理想の音を探した。さらには楽器製造エンジニアの協力を仰ぐことで、理想的な音色を奏でるための構造を探求した。しかも実用性を高めるために、20mの防水性能も兼ね備える。通常のミニッツリピーター機構は、時計内部から外へと音を出すために、非防水であることが多い。しかしオーデマ ピゲの場合は、防水性をもたせつつ、美しい音色を奏でたいと考えた。そこで導き出されたのが、ゴングを反響板に取り付ける構造だった。ハンマーがゴンクを打つと、その振動が反響板に伝わり、音が美しく広がるのだ。


 スーパーソヌリの構造は、アコースティックギターと同じである。ゴングがギターの弦で、反響板がギターのボディとなり、美しい音色が大きく響くのだ。しかしそれでも、音質を追求することは極めて難しい。それは耳という器官がとても繊細で優秀であるために、リズムや音のちょっとしたズレを聞き分けてしまうから。さらには人間の音では感知できない音さえも、脳が補完してしまう為、心地よい音色に調律するのが難しいのだ。

 ちなみに、スーパーソヌリを組み立てることができる時計師は15名いるそうだが、音の感じ方には差があるので、調律は誰にでもできることではない。音解析ソフトによって調整はしやすくなったが、最終チェックは絶対音感を持った時計師が行う。どれだけデジタル技術が進化しても、“心地よさ”を聞き分けるのは、人間の耳しかないのだ。


 ちなみに、その心地よさを作りだす反響板の素材は、教会の鐘に使われるブロンズにチタンを加えた合金を使う。雑音を抑えるために、ガバナー(ハンマーを規則的に動かすため機構)の形状も従来モデルとは異なるが、メカニズムや素材はあくまでもクラシック。そのため十数年後に修理不能になることもない。価値を永続させるのも、オーデマ ピゲにとっては大切なことなのだ。

贅を極めたオーデマ ピゲの超複雑機構5選

【連載】「YOSHIDAで体験する、高級時計への旅」とは?

正規時計代理店YOSHIDA(ヨシダ)と、時計専門サイトGressive(グレッシブ)が、4名の執筆陣とともに送る連載企画。「なぜ、人は腕時計に惹かれるのか?」という普遍的なテーマのもと、名だたる一流ブランドの魅力に触れ、奥深い高級時計の世界へと誘う。

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